交通事故におけるライプニッツ係数
1 中間利息控除(ライプニッツ係数)
⑴ ライプニッツ係数はどんなものか
ライプニッツ係数とは、将来受け取るはずの金銭を、損害賠償の段階で前倒しで受け取るため、得られた利益を控除するために使う指数です。
交通事故の損害賠償請求においては、主に、後遺症による逸失利益を計算する際に用いられます。
⑵ 受け取れる賠償額についてのルール
例えば、1年後に100万円を受け取るはずだったものを事前にもらったとします。
この場合、100万円を1年早く手に入れる事になるので、1年の間、本来よりも早くそのお金を使うことができることになり、利息という利益が発生する事になります。
交通事故に遭ったことを考慮しても、被害者が将来得られるはずの利益を前倒しで受け取ることにより、本来よりも多い利益を得るのは妥当でないとして、前倒しされる期間の利息は差し引かれるべきというルールになっています。
発生する利息については、民法の法定利率(民法改正以降は3%ですので、ここでは3%を前提とします。)で計算されます。
そのため、1年後に受け取れるはずの100万円を、現在の価値に直した場合に、受け取れる金額は、97万0873円(=100万÷(1+0.03))となります。
これが1年ではなく、2年後に受け取れるはずの100万円を現在受け取るとなると、現在受け取ることのできる金額は94万2595円(=100万÷(1+0.03)²)となり、かなり計算が複雑になります。
⑶ ライプニッツ係数を用いると
これを計算しやすくした数値がライプニッツ係数というものです。
例えば100万円を10年間にわたって毎年得ることができる場合、これを一括して現在支払ってもらう場合には、10年に相応するライプニッツ係数が8.5302なので、853万0200円(=100万×8.5302)が受け取ることのできる金額となります。
このように、もらえる金額と年数から計算される合計金額にライプニッツ係数を掛ければ、現在受け取ることのできる金額が算定できるようになっています。
⑷ 後遺症逸失利益の計算例
例えば、年収500万円の人に14級の後遺障害が5年間残る場合について考えてみましょう。
14級の後遺障害は労働能力喪失率5%であり、5年のライプニッツ係数は4.5797となります。
したがって、この損害の賠償を一括で請求すると、111万4925円(=500万円×0.05×4.5797)を受け取れることになります。
後遺障害申請の事前認定と被害者請求 神経症状による後遺障害と労働能力喪失期間