交通事故における初診
1 損害賠償請求における初診の重要性
交通事故でケガをした後の1回目の受診、すなわち初診は、損害賠償請求において重要な意味を持つことが少なくありません。
症状が重篤である、または実際に症状があれば、速やかに病院に行くはずだという経験則があります。
そのため損害賠償請求においては、初診がいつだったのかということが重視される傾向があり、事故日と初診との間隔が大きくなるほど、症状が軽微である、または事故によるものではない等と評価されるリスクが高まることになります。
「多忙だったから」「休みがなかなかとれなかったから」等という理由で初診が遅れたという言い分は、十分な説得力があるとはいえません。
そのため、第三者に誤解されたくない場合は、速やかに通院して診察を受けることが大切です。
2 症状の一貫性も重要
交通事故による症状は、途中でコロコロ変わることはない、一貫しているものだという経験則があります。
そのため、初診の際に申告していない症状を、一定期間経過してから言い出したような場合は、その症状は今回の事故によるものではないと評価されてしまうリスクがあります。
「緊張のため言い出せなかった」という言い分もあり得ますが、こちらも説得力は高くありません。
慣れていない方にとっては簡単なことではないですが、身体に発症している症状については、初診時に部位・内容などをできる限り詳細に、漏れなく伝えることが大切です。
3 診療録による事後確認
診療内容は、診療録(カルテ)に記録され、5年間保存されます(医師法24条)。
診療録の記載内容は、交通事故と症状との関連性や治療の必要性・相当性が争われた際に、重要な証拠として扱われることが少なくありません。
たとえ被害者自身が事実と異なると強く主張しても、診療録記載内容に基づいて事実認定されてしまうことが非常に多いです。
そのため、初診からしばらく経過した後、診療録の開示を求め、初診時の記載内容がどのようになっているかを確認するのも一つです。
医師にもよりますが、争いが表面化していない段階では、診療録の修正に応じてもらえる場合もあると思われます。
診療録に誤りがあり、修正を求めても応じてもらえないような場合は、最終手段として、転院せざるを得ないケースも考えられます。
仮に転院するのであれば、できるだけ早いタイミングが望ましいといえます。
転院するべきかということは非常に重大な判断ですので、ご自身で決めかねている場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
また当サイトでは、交通事故のケガで通院する際の医療機関の選び方についてご紹介していますので、転院をお考えの場合には、参考にしていただければと思います。