交通事故治療に関する画像検査
1 画像検査が重要な理由
画像検査では、肉眼や触診では確認できない身体の異常を見つけることができます。
交通事故における典型例としては、骨折、脊椎の変性、ヘルニアの有無、脳出血等があげられます。
病変・疾患を正確に把握し、それに対する適切な治療方針を立てるという意味で、画像検査を重視される医師の方はとても多いです。
画像検査によって検出された結果は、客観的なものとして扱われるため、立証の観点からも重要となります。
特に、打撲・捻挫については、外部から分かりにくい特性があるため、頚椎や脊椎等に異常・変性が見つかれば、症状の強度・難治性に関する裏付けとなり得ます。
2 レントゲン検査(単純X線検査)
画像検査のうち、もっともポピュラーなのが、レントゲン検査です。
骨は生体で最もX線透過性の悪い組織であり、これを利用して、X線をあてることで骨折に代表される骨病変の存在を調査することができます。
比較的短時間で終了するのも、利点の一つです。
3 CT(コンピュータ断層撮影)
X線を用いているのはレントゲン検査と同じですが、CT(computed tomography)はX線透過性をコンピュータ演算し、デジタル画像として顕出できます。
そのため、病変を立体的に把握したり、重なり像のない断層画像が得られたりする点等で、優れています。
骨だけでなく、急性くも膜下出血等による脳内の出血の有無・程度の把握にも利用されています。
ただ、レントゲン検査より時間がかかることに加え、大量のX線を浴びることになるので、被ばく量はレントゲン検査の数十倍となります。
そのため、年齢や身体の状態によっては使用できません。
4 MRI(磁気共鳴撮像法)
MRI(Magnetic Resonance Imaging)は、生体に変動磁場を作用させ、生体組織を構成する物質の水素原子核の共鳴状態から画像を構成するものです。
骨髄、軟骨、腱、靭帯、脂肪なども描出されるので、広範な疾患の診断に極めて有用とされています。
X線のような放射線被ばくの心配もありません。
ただ、レントゲン検査に比べて撮影時間が長く、検査料も高額になるのが難点です。
また、磁気を用いることから、心臓ペースメーカー、人工内耳、その他体内電子装置を装着されている方は、誤作動を起こす危険があるため、受けることできません。