交通事故によるケガの治療費と過失割合
1 事故の当事者どちらにも過失がある場合
追突事故のように完全な被害事故は除くとして、受傷者に少しでも過失が生じる場合、その過失割合が治療費の賠償額に影響を及ぼすことがあります。
「こちらの過失が2割になったけど、相手方(Bさん)の対人賠償保険のおかげで病院に自己負担なく通院できています」というAさんの例を想定して、以下で説明していきます。
2 賠償責任と一括対応
Aさんの過失が2割、Bさんの過失が8割である場合、BさんはAさんの損害の8割について賠償責任を負うことになります。
これは治療費についても同様で、治療費全額のうち8割支払えばよく、2割については支払う必要はありません。
しかし、病院側としては、一部しか支払ってもらえないのは困りますし、経理処理も混乱します。
それなら、患者であるAさんが全部払って、Aさんが8割分相手からもらってくださいとなるでしょう。
しかしそうなると、今度はAさんに、どうして(一時的にとはいえ)全部支払わなければならないのかという不満が生じます。
自由診療を前提とすると、1回ごとの金額はかなりの高額となるため、事実上通院できないということにもなりかねません。
そのため、通常、Bさん側の保険会社は、一括対応において、病院側に治療費を全額支払った上で、払い過ぎた2割分について、次のような処理を行うことになります。
①Bさんの自動車に付保された自賠責保険(共済含む)から回収する。
②慰謝料等のAさんへの示談金から差し引く。
①が可能なのは、自賠責保険は受傷者の過失が7割以上とならない限り、過失割合に基づく減額をしないからです。
そのため、傷害分120万円の枠を超えない限り、保険会社は払い過ぎた分を回収することができます。
他方、この120万円の枠がなくなってくると、治療費の打ち切りに傾く可能性が高くなります。
②は、治療終了後に行われる示談交渉において、Bさん側に一定程度の示談金の支払い義務が生じることから、払い過ぎた治療費を前記示談金から差し引くことで帳尻を合わせることができるのです。
3 事故後の対応は弁護士にご相談ください
以上の仕組みは、一度見聞きしただけでは分かりにくいところがありますので、実際に交通事故に遭われて一括対応を受けている方は、弁護士に相談することをおすすめします。
歩車道の区別のあり・なし 損害保険会社からの治療費の打ち切り