交通事故と民法改正
1 民法改正による影響
令和2年4月1日から改正民法が施行され、それによって、令和2年4月1日以降に発生した交通事故につき、適用される法律の内容にも変更が生じました。
以下、個別に見ていきます。
2 消滅時効
これまで、加害者に対する損害賠償請求権は、損害及び加害者を知ったときからは3年、事故の時から20年の経過によって消滅時効が完成するとされていました。
これが次のように変更されました。
- ア 物の損害については、これまでどおり(民法724条1項2項)。
- イ 人の生命または身体の侵害による損害については、損害及び加害者を知ったときからは5年、事故の時から20年の経過によって消滅時効が完成する(民法724条の2)。
前記変更の理由としては、人の生命・身体に関する利益は、財産的な利益などに比べて保護の必要性が高いことや、特に治療が長引く場合は損害の確定に相応の時間を要すること等があげられます。
3 法定利率
これまで、遅延損害金や中間利息控除等に使用される法定利率は、年5%とされていました。
これが、年3%に引き下げられ、さらに、市中金利の動向に合わせて3年ごとに自動的に変動するよう変更されました(民法404条2項乃至5項)。
変更の理由としては、年5%の利率が、実態にそぐわなくなったからです。
これによって、被害者が獲得できる遅延損害金は以前より少なくなりました。
他方、中間利息で控除される分が少なくなったことによって、死亡・後遺障害逸失利益は以前より増えることになりました。
4 経過措置
生命または身体の侵害による損害については、令和2年3月31日以前の事故でも、令和2年4月1日時点で3年の消滅時効が完成していなければ、改正民法に基づく消滅時効が適用されると定められました。
つまり、令和2年1月1日事故で負傷した被害者が、加害者(※ 事故発生直後に知ったとする)に治療費や慰謝料等を請求する場合は、時効の完成猶予や更新があった場合を除き、令和6年12月31日の経過によって、消滅時効が完成することになります。