弁護士に依頼する場合相手方氏名を確認しなければならないのはなぜ?
1 法律等による禁止
弁護士法25条や弁護士職務基本規程27条等では、弁護士が職務を行ってはならない場合を規定しています。
それに該当するか否かを調べるため、一般には相談前時点において、事件の相手方氏名(法人の場合は会社名)の聴き取りが行われています。
いわゆる利益相反確認です。
2 職務を行ってはならない場合の具体例
⑴ すでに当該事件の相談を受けている
1つ目は、相手方から、当該事件の内容について、法律相談を受けて具体的な意見を述べたり、実際に受任したりした場合です。
例えば、AさんとBさんの交通事故において、Aさんが甲弁護士に事件の法律相談をしようとしたところ、先にBさんから同じ交通事故の相談を受けている場合、甲弁護士はAさんの法律相談に応じることはできません。
禁止されている理由は、先行して当該弁護士に相談し、依頼した相手方の信頼を裏切ることになり、ひいては弁護士の品位を失墜させることにつながると考えられるからです。
もっとも、弁護士の数の少ない地方において、狡猾な当事者が複数の弁護士に一応の相談をして相手方代理人となることを封じ込める(唾付けといいます)という不都合を避けるため、相談は双方の信頼関係に基づくものであることが必要とされ、立ち話的な相談や詳細な事実関係の開示のない抽象的な相談にとどまっている場合は、これに当たらないと解されます。
⑵ 相手方から他の事件を受任している
2つ目は、当該事件の相手方から、他の事件について現に受任している場合です。
例えば、CさんとDさんの交通事故において、Cさんが乙弁護士に事件の法律相談をしようとしたところ、先にDさんから別の相続事件を受任していた場合、乙弁護士はCさんの法律相談に応じることはできません。
禁止されている理由は、当該弁護士がきちんと線引きをすると約束したとしても、第三者的視点では、先行している相手方の利益を害するおそれが相当あり、ひいては弁護士の職務執行の公正に対する不信・疑いを招き、弁護士の品位と信用の低下につながると考えられるからです。
3 利益相反確認にご協力ください
利益相反確認を行うに際し、当法人に相談に来られた方につきましても、ご面倒をおかけするかもしれませんが、何卒ご協力いただきますようお願いいたします。
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