後遺障害による収入の減少がない場合にも逸失利益は認められますか?
1 逸失利益とその計算方法
収入の減少がなかったとしても、被害者の努力等で収入を維持している場合や、将来の収入の減少の蓋然性がある場合には逸失利益が認められることがあります。
逸失利益とは、残存した後遺障害によって労働能力が減少するために、将来発生するものと認められる収入の減少をいいます。
例えば、給与所得者の逸失利益の計算式は、「事故前の基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間の年数に対するライプニッツ係数」という計算式で算出されます。
2 事故後の減収がない場合の逸失利益の問題点
逸失利益の計算式は現実の収入の減少の程度を考慮する要素がありません。
そのため、現実の収入の減少が認められない場合でも、逸失利益の計算式にしたがって逸失利益が認められるのかが問題になります。
3 裁判例の傾向
事故後の減収がない場合の逸失利益については、学者の見解も複数あり、これまでの裁判例に対する解釈も複数あるところです。
しかし、一般的な裁判例の理解としては、事故によって現実に労働能力が低下し、被害者に減収が生じていない理由が被害者の不断の努力や使用者の配慮等によるもので、長期間その状況が継続できるのか定かではないこと等が立証される場合には、後遺障害による逸失利益を認めることができると考えられています(佐久間邦夫・八木一洋『交通損害関係訴訟〔補訂版〕』青林書院2017年)。
4 逸失利益については交通事故に詳しい弁護士にご相談ください
逸失利益はその損害額が多額になる一方で、後遺障害の内容や事故後の減収がない場合など、多数の論点があります。
そのため、適切な賠償金を獲得するためには、これらの論点に精通する弁護士に相談をすることをおすすめします。
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