交通事故で労災保険を使うことはできますか?
1 労災保険の適用要件
労働者災害補償保険、すなわち労災保険には、法律によって要件が定められています。
具体的には、業務災害、または、通勤災害であることです。
業務災害とは、業務上の事由により(※ わかりやすく言うと、仕事中に)発生した負傷、疾病、障害、死亡のことをいいます。
通勤災害とは、労働者の住所と就業場所との往復等の通勤中に被った負傷、疾病、障害、死亡のことをいいます。
2 交通事故における労災保険と使用によるメリット
前記要件に照らすと、業務中または通勤中に交通事故に遭って死傷した場合、業務災害または通勤災害として、労災保険を使うことができます。
「加害者の車に自動車保険・共済が付保されていれば、労災保険を使う必要はないのでは?」との相談を受けることがありますが、労災保険使用には複数のメリットがあります。
⑴ 過失割合に左右されない
加害者の自動車保険・共済は、加害者の賠償責任に応じて支払われるものなので、加害者の過失割合が80%であれば、80%しか支払ってくれません。
これに対して、労災保険では、被災者の過失割合に関係なく、治療費等を支払ってもらえます。
⑵ 特別支給金
労災保険では、休業損害や後遺障害に対して、特別支給金が支払われます。
この特別支給金は、労働者福祉の観点から実際の損害てん補とは別に支払われるものなので、結果として、労災保険を使わなかった場合に比べて受領できるお金が多くなります。
⑶労災保険における障害認定
労災保険における障害認定は、自賠責保険・共済と同じ基準を用いていますが、判断者が異なることで、自賠責保険・共済と異なる等級が認定されることがあります。
具体的には、自賠責保険・共済において14級としか評価されなかったものが、労災保険において12級と認定されたりすることがあります。
もちろん、逆になる場合もありますが、労災保険の認定によって、後遺障害の不当な評価を是正できる可能性があります。
3 労災保険使用における事実上の障害
会社から労災保険の使用を認めてもらえないという声を、しばしば聞きます。
会社が難色を示すのは、労災保険使用によって労働基準監督署から目を付けられるからという理由が大半だと思われます。
もっとも、基本的には心配のし過ぎと思われますし、労災保険に加入しておきながら肝心な時に使わせないというのは、甚だしい労働者軽視です。
どうしても会社が同意してくれない場合は、その事情を労働基準監督署に説明すれば、労災保険使用を認めてもらえますので、最後の選択肢として考えておくべきでしょう。
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