借金の時効とは

改正前の民法１６７条１項は、「債権は、十年間行使しないときは、消滅する。」と規定していました。

つまり、例えばＡさんが令和元年１２月１日に友人のＢさんから５０万円を借り入れ、その返済日を令和２年１１月３０日と定めていたが、ＢさんはＡさんに返済を求めることを一切せず、Ａさんも返済せずに放置していたという場合、令和１２年１１月３０日の満了により、Ｂさんの貸金返還請求権は時効により消滅します（なお後述しますが、時効の効果を生じさせるためには「援用」という手続きが必要です）。

削除前の商法５２２条は、「商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、五年間行使しないときは、時効によって消滅する。」と規定していました。

これを商事消滅時効といいます。

改正民法の施行によりこの条文は削除されますが、施行日より前に生じた債権についてはこの条文が適用されます。

銀行や消費者金融、クレジット会社による貸付はいずれも商行為に該当しますので、改正民法の施行日前に発生した貸付債権の消滅時効期間は５年となります。

そして、改正前の民法１６６条１項は、「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。」と定めていましたので、貸付債権については、期限の利益を喪失した日の翌日から貸付債権全体の消滅時効の進行が開始することとなります。

なお、極度額を定めた継続的金銭消費貸借の場合、返済期日に１回でも返済が遅れた場合は期限の利益を喪失すると定めていることが多いです。

住宅金融支援機構、学生支援機構、社会福祉協議会、信用金庫等による貸付は商行為に該当しませんので、原則どおり民法の１０年の時効が適用されます。

ただし、事業資金の貸付けの場合は商行為に該当する場合がありますので注意が必要です。

詳しくは弁護士にご相談ください。

消滅時効の効果を発生させるためには、貸金業者等に対し消滅時効を援用する手続きが必要です。

消滅時効を援用しない限り、消滅時効期間が経過したとしても、債権は消滅しません。

そのため、消滅時効を援用しないと、信用情報にも事故情報が掲載されたままとなります。

なお、消滅時効の援用の通知は、証拠として残るよう、配達証明付きの内容証明郵便で行うのが通常です。

既に消滅時効期間が満了している借金についてその返済を求める訴訟を提起され、訴訟の手続で消滅時効の援用を主張しないまま判決が出て確定してしまうと、もはや消滅時効を主張することはできず、判決確定の日から新たに１０年の時効が進行することになります。

訴訟の前に時効援用の手続を行っていた場合でも、訴訟手続で消滅時効の援用を主張しなければ、結果は同じになります（ただし、既に消滅時効の援用が行われている債権について貸金業者や債権回収業者が訴訟を起こすことはまずありません）。

支払督促を申し立てられた場合は、期間内に必ず異議の申立てを行うと良いかと思います。

消滅時効期間が満了している借金について訴訟を提起されたり支払督促を申し立てられたりした場合に重要なことは、放置せず直ちに弁護士に相談することです。